活動報告

「自分にもしものことがあったら、残された財産はどうなるのだろう」
50代を過ぎた頃から、ふとそんなことを考える方が増えてきます。とくに、配偶者や子どもがいない方、いわゆる「おひとりさま」や「子のいないご夫婦」にとって、この問いは決して他人事ではありません。
実は今、ある衝撃的な数字が静かに広がっています。
2024年度、相続人がいないために国庫へ納められた財産は、約1,292億円。
これは記録の残る2013年度のおよそ4倍にあたります(最高裁判所への取材に基づく報道より)。
「自分が一生かけて築いてきた財産が、最後は国の収入になる」――そのことを、ご本人が望んでいたとは限りません。
本記事では、終活を意識し始めた50〜60代の方に向けて、おひとりさまや子なし夫婦が直面しやすい相続の現実と、そこに新たな選択肢として注目される「遺贈」の意味と仕組みを、専門的な視点から丁寧に解説していきます。
なぜ今、「おひとりさま」「子なし夫婦」の相続が社会課題になっているのか
増え続ける「行き場のない遺産」
冒頭でお伝えした1,292億円という金額は、10年前のおよそ4倍。1,000億円を超えたのは2023年度が初めてで、その翌年にはさらに約3割増えています(出典:最高裁判所取材、Bloomberg・日本経済新聞報道)。
この急増の背景には、ライフスタイルと家族の形の大きな変化があります。
- 生涯未婚率の上昇:50歳までに一度も結婚したことのない方の割合は、2010年に男性20.1%・女性10.6%でしたが、2035年には男性29%・女性19.2%に達すると予測されています(国立社会保障・人口問題研究所)。
- 65歳以上で亡くなった方のうち未婚だった方の数は、10年で1.7倍に増加。男性に限れば2.2倍です。
- 結婚していてもお子さまをもたないご夫婦、いわゆる「DINKs」と呼ばれる方々も、社会の中で確実に増えています。
つまり、「相続人がいない」状態は、もはや特別なケースではなく、これからの日本でごく当たり前に起こりうる状況なのです。
「相続人がいない」と、財産はどうなるのか
民法上、亡くなった方の財産を受け継ぐことができるのは法定相続人(配偶者・子・親・兄弟姉妹など)に限られます。
法定相続人がひとりもおらず、遺言書も存在しない場合、財産は次のような流れをたどります。
- 利害関係者や検察官の申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」(旧称:相続財産管理人)を選任
- 官報で相続人の捜索を公告(数回、数カ月にわたる)
- 故人の債務(家賃・医療費など)を清算
- 「特別縁故者」(生計を共にしていた人、療養看護に努めた人など)がいれば、申立てにより家庭裁判所が財産の一部または全部を分与
- それでも残った財産は、最終的に国庫へ帰属
この一連の手続きには、家庭裁判所の手数料、相続財産清算人への報酬など、相応のコストがかかります。さらに、内縁関係のパートナーや同性のパートナーは、現行制度では法定相続人として認められず、特別縁故者として認められるハードルも高いのが実情です。
つまり、「何もしないまま」を選択することは、ご自身の財産の行き先を、ご自身の意思以外のしくみに委ねることを意味します。
「遺贈」とは何か――法律と仕組みを正しく知る
ここで登場するのが、遺贈(いぞう)という制度です。
遺贈の定義
遺贈とは、遺言によって、ご自身の財産を特定の人や法人(団体)に無償で譲ることを指します。法定相続人の有無や関係性にかかわらず、財産を受け取る相手をご自身の意思で指定できる、唯一の合法的な手段といえます。
遺贈には大きく分けて二つの種類があります。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 包括遺贈 | 財産全体に対する一定割合(例:「全財産の3分の1」)を遺贈 | 「全財産の半分をA団体に遺贈する」 |
| 特定遺贈 | 個別の財産(特定の預金、不動産など)を指定して遺贈 | 「○○銀行△△支店の預金をB団体に遺贈する」 |
おひとりさまや子なし夫婦のように「特定の誰かに引き継いでもらう先がない」場合、遺贈は、ご自身の人生の集大成として財産の行き先を選ぶ、もっとも明確で確実な方法です。
「相続」とどう違うのか
混同されやすい言葉ですが、両者は法的にはまったく別物です。
- 相続:法律で定められた相続人が、法律にしたがって財産を承継する
- 遺贈:遺言者の意思によって、相続人以外(個人・法人)にも財産を譲ることができる
相続は「法律の定め」、遺贈は「ご自身の意思」。この違いは、これからの選択を考えるうえで非常に重要な視点になります。
おひとりさま・子なし夫婦にとって、遺贈が持つ三つの意味
①「自分の意思」を最後まで貫ける
遺贈の最大の意味は、ご自身が築き上げてきた財産の行き先を、ご自身で決められることにあります。
「お世話になった人に感謝の気持ちを残したい」「ずっと応援していた活動を、亡くなった後も支えたい」――そうした想いを、法的に確実なかたちで託せるのが遺贈です。
② 配偶者の生活を守りながら、その先の未来も描ける
子のいないご夫婦の場合、配偶者だけでなく、亡くなった方の兄弟姉妹(あるいはその子である甥・姪)にも相続権が発生することをご存じでしょうか。
これにより、たとえば次のようなケースがしばしば見られます。
- ご夫婦で築いた財産の一部が、長年疎遠だった配偶者の兄弟姉妹に渡ってしまう
- 不動産が共有名義になり、配偶者ひとりでは自由に処分できなくなる
遺言で「すべての財産を配偶者に遺贈する」と明記しておけば、こうした事態を防げます。さらに、配偶者亡き後の財産の行き先まで遺贈先として指定しておくことで、お二人の人生の集大成を、より明確な形で社会へと託すことが可能になります。
ご注意:兄弟姉妹には「遺留分」(法律で保障された最低限の取り分)はありませんが、子・親など他の法定相続人がいる場合は遺留分があり、遺言の内容に制限がかかることがあります。必ず専門家にご相談ください。
③ 社会への「橋渡し」になる
遺贈先は、個人だけでなく、公益団体やNPO、慈善団体なども選べます。とくに公益財団法人など、税制優遇措置の対象となる団体への遺贈は、相続税の課税対象から外れるケースもあります(相続税法第12条等。詳細は税理士にご相談ください)。
ご自身の財産が、子どもたちの未来、医療、福祉、文化などの形で社会に循環していく――これは、おひとりさまや子なし夫婦だからこそ叶えられる、もうひとつの「家族の遺し方」とも言えるでしょう。
「気持ちはあるけれど、何から始めれば」――はじめの一歩
遺贈を考え始めたとき、多くの方が「具体的に何から手をつけていいかわからない」と感じます。専門家として、最初の三ステップをお伝えします。
ステップ1:財産の棚卸し
預貯金、不動産、有価証券、保険、その他資産――ご自身の財産を一覧にしてみましょう。ノートでも、エンディングノートでも構いません。「全体像を把握すること」が、すべての出発点です。
ステップ2:「誰に・何を・どのくらい」を考える
遺贈先の候補を、ゆっくり考えてみてください。お世話になった方、応援したい活動、関心のある分野――思いつくままに書き出してみるのがおすすめです。当センターのような相談窓口でも、ヒアリングを通じて整理のお手伝いができます。
ステップ3:遺言書の作成
ご自身の意思を法的に確実なかたちで残すには、遺言書の作成が不可欠です。とくに遺贈の場合は、形式に不備があると無効になるリスクもあるため、公正証書遺言をおすすめしています。弁護士、司法書士、行政書士、信託銀行など、専門家のサポートを受けながら進めるのが安心です。
「遺贈は大きな金額が必要」という誤解
遺贈について、よくお寄せいただく不安があります。
「遺贈って、たくさんの財産がないとできないんでしょう?」
これは、もっとも多い誤解のひとつです。
遺贈に最低金額の決まりはありません。預貯金の一部、保険金の受取分、不動産の一部――どんな形でも、どんな金額でも、ご自身が「これだけは」と思う範囲で遺贈は可能です。
また、「老後の生活が心配」という方も多くいらっしゃいますが、遺贈はあくまでご自身が亡くなった後に発生するもの。生前のご生活には一切影響しません。ご自身の人生を十分に楽しんだ「その先」を、どう託すか――それが遺贈の本質です。
おわりに――ご自身の人生に、ご自身の意思で「結び」を
おひとりさま、子なし夫婦という生き方は、決して特別なものではなくなりました。そして、その人生をどう締めくくるかも、これからは「自分で選ぶ時代」です。
行き場のない遺産1,292億円という数字は、裏を返せば、1,292億円分の「意思を遺さなかった」人生でもあります。
ご自身の財産が、ご自身の想いとともに、誰かの未来や社会の希望につながっていく――遺贈は、そんな「最後の贈りもの」を可能にする選択肢です。
全国児童養護施設総合遺贈受付サポートセンターでは、遺贈に関するご相談を無料で承っております。
- 「遺贈ってどう始めればいいの?」
- 「自分の場合、何ができるの?」
- 「遺言書はどう書けば?」
どんな段階のご相談でも構いません。承継寄付診断士が、お一人おひとりのご事情に寄り添ってお話を伺います。秘密は厳守いたします。
ご自身の人生に、ご自身の手で「結び」を――そのお手伝いができれば幸いです。
参考・出典
- 最高裁判所への取材報道(Bloomberg、日本経済新聞、北海道新聞 2025年)
- 日本総合研究所「相続人がいないため国庫帰属となる相続財産は約1,300億円」(2025年9月)
- 国立社会保障・人口問題研究所「生涯未婚率の推移」
- 民法 第889条、第958条の2(特別縁故者への相続財産分与)、第964条(包括遺贈・特定遺贈)
- 相続税法 第12条(非課税財産)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談・税務相談に代わるものではありません。具体的な手続きにあたっては、必ず専門家にご相談ください。
遺贈についてもっと詳しく知られたい場合は、全国児童養護施設総合遺贈受付サポートセンター相談窓口よりご連絡いただけましたら、承継寄付診断士が適切にご対応させていただきます。
オレンジの羽根募金
児童養護施設の子どもが安心できる社会づくりへ
「オレンジの羽根運動」は、児童養護施設の現場職員が発足した社会活動です。
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共に支える大人の輪をつくることが目的です。
そんな想いで、私たちはこの活動を行なっています。
多くのみなさまへ活動を周知されるご協力をよろしくおねがいします。
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【FM世田谷/放送中】はなわと岩崎ひろみの ON AIR もっち〜ラジオ
お笑いタレント“はなわ” と女優の“岩崎ひろみ” がお届けする『ON AIR もっち~ラジオ』♪” 子どもたちの“ワクワク♪”を、もっと大きく膨らまそう ”をテーマに、“はなわ”と“岩崎ひろみ”が、子育て経験も交えて面白おかしく元気にお届けします!
〈放送日時)毎週日曜日/11:00~11:15
〈パーソナリティ〉はなわ 岩崎ひろみ
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【公開中】Youtubeチャンネル

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【寄付】あしながサンタ
2019年8月に全国の児童養護施設(607施設)へ、クリスマスに関してのアンケート調査を実施しました。アンケート調査により、1施設あたりの子ども1人に対してのクリスマスプレゼント代の平均予算(約3000円)がわかりました。そこで分かったのが、どの施設も子どもたちが施設生活を送る上で、不自由がない生活を送らせるために、クリスマスの予算を、習い事、衣服費、小遣い、ユニット旅費などに、適切に振り分けられていることがわかりました。ここに私たちがサポートできることがあると考えました。
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